ぶらっくまんた

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『非対称アンビバレンス』

「七、八、九……一枚足りない」
考えるよりも先に足が出た。膝元で正座していたサニーは面白いくらいに吹っ飛んで、鼻の両穴から血を流す。言葉にならない悲鳴を上げながら転げまわる相方に、残されたルナとスターも顔を青くする。
「困るんだよねえ。これじゃあノルマに届かないじゃん。足りない分どうするつもり?」
「あ、そ、それは……」
「その、働いて」
「祭りはもう終わってんだよ!!」
にとりの恫喝に二人は惨めなくらいに小さくなる。それを眺めてにとりは心の中で顔を歪ませる。
幻想郷にクーリングオフは存在しない。薦められるままアレコレ発明品を買い求めてしまった三月精は今やにとりの借金奴隷に等しい。妖精の頭で利子などという言葉は理解できず、なぜか減らない借金額に首をかしげることもなく日々を泣いて過ごしている。
上客のついた祭りのお面売りは数少ない借金返済のチャンスであったが、それももはや後の祭りだ。もちろんにとりが売り上げをちょろまかしていることなど彼女らの想像の埒外にある。
「あー、ムカつくなあ。そうだ。お前らそこに並んで仰向けになれ」
「え?」
「さっさと並ぶ!」
ぴぃと悲鳴を上げて、スターとルナは地面に仰向けになる。にとりは涙目で鼻血をすするスターを蹴飛ばしてその横に転がせた。ずらりと並ぶ三妖精の顔。不安に互いを見合わせるその顔に向かい、にとりはスカートをまくり上げてショーツを下ろす。
「お前ら便器な!」
流石にこれなら何をされるのか理解したのか、三妖精は岩戸のごとく目と口を閉じる。にとりはルナの腹にアームハンドを叩き落とした。
「うぶぅ!?」
「口開けてろ便器。ゲロ吐きたいか」
鳩尾を強打し、むせるルナチャイルド。慌ててサニーとスターは口を開ける。
「ほれ、便器。にとり様のおしっこだぞ」
にとりの股から黄色い尿が飛び出した。発汗により凝縮された尿は黄色を通り越してオレンジ色で、白い湯気と共に強烈なアンモニア臭が漂う。それをもろに顔面にくらったのだからサニーがえづくのも無理はない。にとりは花壇に水でもやるかのように三人の顔に尿を降りかける。ずいぶん溜まっていたのか、にとりの排尿は相当に長く続いた。
「ふーっ、出た出た」
ルナの巻き髪で股間を拭く。自慢のロールが尿でぐしゃぐしゃにされたことにルナは涙する。そんな中、一人ほっと胸を撫で下ろしているのはスターだ。彼女は頬に軽く尿がかかった程度で済んでいる。服にかかった分は洗えば良いだけだし、今日はまだ殴られてもいない。このままにとりの気が済めば自分たちは解放される。
そんな淡い期待を胸にしているスターの眼前をにとりの股が遮った。
「ふえ?」
「なんか、大きい方もしたくなってさ」
にやにやと笑うにとり。そして目の前にある無毛の肛門にスターは悲鳴を上げた。
「はがっ!」
「おバカな豚には最高のごちそうだろ? たんと食えよ」
アームハンドで口を無理やり開かされる。つんと鼻先に香る強烈な匂い。このためかどうかは知らないがにとりが腹の中に相当な汚物を溜めこんでいることは確実でスターは過呼吸気味にびくびくと身体を痙攣させる。
「に、にひょりしゃまああ! ゆるひて! ゆるひてくははい! ゆるひてくははい!」
閉じられない口で滑稽な懇願を繰り返すスター。嗜虐的な快感に背筋を痺れさせつつ、にとりは腹に力を込めた。
「ふああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
ぶりりりりりりりりっ! ぶっ! ぶびっ! びちびちびちっ!
キュウリほどの太さの固形便が断続的にスターの顔に落ち、茶色の泥を塗りたくる。鼻の穴は糞で塞がれ、吐き気を催す悪臭に押し潰される。口の中にも当然侵入し、アームでがっちりと広げられた口にダイブした便はスターの喉まで達して気道を塞ぐ。
「ああ~、これ良い便器だなあ。いっぱいでるよ」
予想以上の快便に、にとりは頬杖しながらうっとりと頬を染める。
ほとんど失神しているスターの髪を便所紙代わりに使い、その隣で青ざめている二人へとにとりは視線を送る。
「お前らもして欲しいか?」
ぶんぶんと首を振る二人。そんな二人に見せつけるようににとりはスターの傍に落ちたうんこを両手で掬いあげる。
「遠慮するなよ。仲間はずれにはしないからさ」
「ひっ――うぶぅぅぅ!!」
「ぶぇえええええええ!!」
糞を二人の口へと突き込むにとり。汚れた手袋をそのまま詰め込み、ぱんぱんと手を払う。
「ふー、すっきりした。あ、金は返せよ。次は明後日の夜ね。それまでに返せなかったら、コンクリに詰めて湖に沈めるからな」
言うだけ言ってにとりは三人に背を向けた。糞を咥えさせられた三人はぐずぐずと泣きながら、口の中をゆすぐために川へと這いずっていく。

 

「あー面白かった!」
自宅へと帰り、にとりはソファーの上で手足をばたつかせる。
やはり妖精いじめは堪らない。初めはちょろい商売相手のつもりだったが、何をされても抵抗できない奴らを散々に貶めるのは異常な快感であった。バカなあいつらは借金のカラクリなんて理解できないし、度が過ぎて殺してしまってもまた生き返る。まったくもって暇つぶしには最高の素材である。
「さて、あいつらどうするかなー?」
明後日までに金を揃えられなかったら三人は本気で沈めるつもりだ。その前に手足でも切り落としてみようと思う。妖精とはいえ痛みが無いわけではない。手足を落とされ、コンクリで動けなくされ、湖の水でじわじわ溺死していくのはどれほどの苦痛だろうか。
これを味わえば借金など関係なくあいつらは自分に逆らえなくなるだろう。
「ほーんと! 河童丸儲けだよ!!」
げらげら笑った後、にとりはソファーの上で居眠りを始めた。よだれを垂らし顔を緩ませる。その間にも三妖精たちが人間の里で一騒動起こしているなど、にとりの想像もしなかった。

 

 

「あ……うあ……」
「なに? なにか言うことあんの?」
祓い棒で頬を殴られ、にとりは鼻血と口血をいっぺんに流す。久々の痛みは気を失いかけるほどで、悔しさと訳のわからなさに涙が自然と込み上がってくる。
「な、なんでえ……」
「あいつらがゲロったのよ。あんたに命令されて盗みをやったってね」
霊夢の背後には三人の男に連れられた三妖精の姿があり、地べたに這いつくばるにとりを驚愕と侮蔑の眼差しで見つめている。
事の始まりは、追いつめられて三妖精が盗みを計画した事にある。
借金の額を正確に把握できていない三妖精は『とにかく金を持っていそうな人』を相手にすることに決め、人里でも羽振りの良さそうな、でもあんまり強くなさそうな人を選んで盗みのターゲットとした。
それが『里長の息子』『問屋の後継ぎ』『里一番の料亭の若頭』という最悪の選択だったのは不運な偶然としか言いようがない。稗田家のような特殊な家柄を除けば里でも最高の影響力を持つ若人たちは、その資産力を持って博麗の巫女に妖怪退治を依頼。三妖精はあっさりと捕まり「河城にとりに命令された」と証言したのだった。
正確には盗みそのものを命令された訳ではないので計画犯には当たらないのだが、そんな細かいことを気にする幻想郷の巫女ではない。異変は根こそぎ解決するのが霊夢流のやり方である。そしてこの世界の司法は個人的感情に一任されている。
こうしてにとりは自宅で発明品をいじっていた所を捕縛され、男たちの前に引きずり出されたのだった。
「ちが……私はそんなこと言って」
「うるさい」
草履で腹を蹴られる。
にとりはカエルが潰れたような悲鳴を上げてのたうち回る。
その光景を一瞥し、霊夢は男たちに数枚の札を手渡す。
「それじゃ私は行くから」
「はい。このたびはありがとうございました。これはささやかですが」
霊夢へと手渡された革袋にはずっしりとした重量感があった。
「別に。人間を守り妖怪を退治するのが巫女の役目だからね。まあこれはお賽銭として受け取っておくわ」
口調こそ抑えているが、その声色にはうきうきとした様子が隠し切れずにいる。霊夢は里の市場に向かい、踊るように去っていった。
「さて、と」
震えるにとりを見つめ、男たちは裂けるような笑みを浮かべる。
「場所を変えようか」

 

「あ、あの」
「ん?」
「なんで膝の上に座るんですか?」
男たちの屋敷へと移動した三妖精とにとり。どういうわけか、三妖精たちは椅子に座る男たちの膝上に座らされた。
「いやあ。僕たち、君みたいな小さい子が好きなんだ」
「もし良かったら、僕たちの恋人にならない?」
「え? こいびと? それってなんですか?」
「こういうことする関係のことだよ」
「ん!?」
抱き寄せられ、唇を重ね合わせる三人。にとりの仕打ちとはまるで違う、優しい扱いと心地良さ。ちゅっちゅっ、とついばむように繰り返されるキスに三妖精は顔を蕩けさせる。
「ぷは……ぁ」
「どう? 気持ち良いでしょ?」
口の間にかかる白い橋。三妖精は恥ずかしそうに顔を背けた。しかし服を握る手は離さない。その反応に男たちはにやりと顔を見合わせる。
「それで、こいつどうしようか」
突然話を振られ、にとりはびくりと肩を揺らす。三人に囲まれるようにして正座をしていては、顔を青くしたまま床を見つめることしかできない。
「散々酷いことしたらしいね」
「里でも不良品売りつけたりしてたね」
「許せないよ。ね、ルナちゃ~ん」
すりすりと頬擦りされるルナを睨みながらにとりは唇を噛む。なぜ自分がこんな目にあわねばならないのだ、という理不尽に対する怒りで爆発しそうだった。できることならあの妖精どもをくびり殺してやりたい。だがそれはできない。
「なに睨んでるの?」
「や――ぎぃあああああああああああああああああっ!!」
男の一人が札を握る。それだけで骨から肉が剥がされるような痛みが全身を襲う。恐ろしい苦痛。しかし致命傷には至らない。霊夢の残した対魔札は恐ろしい威力であった。
「ルナちゃんが怖がってるでしょう? 謝ってよ」
「あぎっ! あっ! ご、ごめえぎぃぃぃ!」
「え? なんて? 何言ってるのかわからないよ?」
「おっ! ごお、ごめんなざいいぃいぃぃっ!! ごめんんざあいいいいいいぎぎ!!」
痛みの中でにとりは必死に謝罪を繰り返す。
ようやく札をしまわれた頃には、にとりはフライパンの上の目玉焼きのような体でくたばっていた。
「ね、僕たちこいつより強いんだよサニーちゃん」
「心配しなくいいんだよスターちゃん。僕たちが守ってあげるよ」
「だからさ。自分の立場を思い知らせてやろうよ」
男たちは一旦サニーたちを膝から下ろし立ち上がる。そしてにとりを囲むように立つと、人差し指を下に向けた。
「土下座」
「……え?」
「土下座だよ土下座。本当に悪いと思ってるならできるだろ?」
呆然とにとりは口を開く。だが再び札を取り出されるのを見て慌てて膝をついた。
膝を折り、手をつき、数秒の沈黙の後に額を床に擦りつける。一切の抵抗の意思も失った者だけができる屈服の姿勢。歯を噛み砕かんばかりの屈辱の中、にとりは保身のためにプライドを捨てる。
「おお、本当にやったよ」
「恥も外聞もないんだね」
「もっと額を擦りつけないと土下座じゃない、よ!」
「うぎっ!」
後頭部を踏みつけられ、がつんと良い音が響く。額が擦り切れ、血が滲み出る。
「ほら、みんなも来なよ」
男たちに呼ばれたものの、三妖精はお互いに顔を見合わせるばかり。さらに髪間から睨むにとりの瞳を見てびくりと肩を震わせる。
「ぐぶっ!」
容赦なく踏みつけられ、にとりは沈黙する。
三妖精は男たちに手招きされるままおずおずとにとりに近づき、きゅっと男たちの服を握りしめた。
「やってみなよ。面白いよ」
顎で示されたのは土下座中のにとりの頭。そこにがしがしと足を踏み下ろしながら男は笑う。
「わ、私やるよ!」
前に出たのはサニーだ。両手を握りしめながらも、にとりの前に出て足を振り上げる。
「んっ!」
サニーの小さな足がにとりの頭を踏みつける。
あの憎たらしい河童が今、自分の足下に居る。それだけでサニーは股下から脳髄に響くような達成感を味わう。
青い髪をまるで親の仇のようにサニーは何度も踏みつけた。額に汗を浮かべ、くるぶしが痛くなってもサニーは止めようとはしなかった。
「ほら、ルナもスターも!」
促され、ルナとスターも頷き合う。にとりを囲むように立つと、三人揃って足を振り下ろす。
「この! このこの!」
「よくも私たちのことを苛めてくれたな!」
「お前も同じ目にあわせてやる!」
小さな足とはいえ絶え間なく振り下ろされれば、かなりの痛みとなる。鼻からは血が噴き出し、顔の細かな傷はもう数えられないほどだ。
「こ、この――あああああああああああああっ!!」
反抗心に顔を上げようとしたにとりに、すかさず男は札を握った。痛みに転げ回るにとりに三妖精は一度動きを止めるが、それが自分たちに被害を及ぼすものではないと理解するとのたうつにとりに蹴りを放ち始める。
「あははは! 面白い!」
「ほらお尻も蹴飛ばしてやる!」
「豚みたいに鳴け!」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
だんだんと嗜虐的な快感に目覚め始めたのか、三人の顔には歪むような笑みが浮かび始める。
暴行は三妖精の気が済むまで続けられ、にとりは亀のように丸くなるしかなかった。

 

 

「朝ですよ~」
「ひぎっ!」
突然浴びせられた冷水に蔵の端でうずくまっていたにとりは飛び上がる。
見れば男たちがにとりを囲んでいて、その背後には男たちにべったりとくっつきつつ、意地悪い笑みを浮かべる三妖精の姿がある。
「あ……う」
「汚い面だね」
指摘されて慌ててにとりは腕で顔を隠す。昨日の土下座によって顔面は傷だらけ。水浴びもできず、一晩中涙と鼻血を流し続けた結果、にとりの顔にはパテのような血の跡がこびり付いたままだ。
「あははは! 本当だ! きったなーい!」
「あんな顔、私なら恥ずかしくって人に見せられないわね」
「でも、豚にはお似合いの顔じゃない?」
好き放題言い放ち、笑い声を上げる三妖精。にとりは屈辱に歯噛みするが、昨日のことで自信を付けたのか三妖精は余裕そうにふふんと鼻を鳴らす。
「さて、それじゃあ出かけようか」
「はーい」
ぎゅっ、とパートナーの腕を取る三妖精。男たちが軽く胸を触ると「あんっ」と甘い声を返した。
「お前にはこれな」
「……え」
にとりの前に放られたのは犬用の首輪とリードだった。銀のビスの打ち込まれた赤い革をにとりは呆然と見た後、顔を上げる。
朝日を背に六人分の瞳がにとりと見つめていた。

 

「ぐっ、はぁ……」
「ほらほら、もっと早く歩け!!」
木の枝で尻を叩かれ、にとりは小さく悲鳴を上げる。
今、にとりたちは人里に来ていた。
首輪を付けられいわゆる四つん這いの姿勢にされたにとりは三妖精を背に乗せ、街道を歩かされていた。身体の小さな妖精とはいえ三人も背に乗せれば少女の腕力では限界がある。だが肩をつこうものなら即座に札による処罰が飛んでくることはわかっていた。気まぐれに引かれるリードの苦しさと尻に落とされる鞭の痛みに耐えながら、何とか歩き続ける。
「いやあ、しかしサニーちゃんたちの能力は便利だなあ」
「僕たちの姿も音も全然気にしてないもんな」
褒められたのが嬉しいのか、サニーはえへへと頬を綻ばせ、ルナは顔を朱に染める。
「さて、この辺で良いかな」
男の指示で三妖精はにとりの背から降りる。ようやく重荷から解放されたにとりはその場でへたり込んでしまった。その尻を男は思いっきり蹴り上げる。
「ひぎっ!」
「いつ休んで良いって言ったかな?」
「ご主人様たちの許しも無く座って良いと思ってるの?」
「これはお仕置きかな?」
札を取り出す男たちににとりは顔を青くして四つん這いの姿勢を取り直す。
手足ががくがくと震えるがそれでも強引に力を込める。まるでトイレを我慢しているかのような顔に男たちも三妖精も噴き出す。
「っぷ! 良い顔だよ!」
「あ、お、お願い……も、もう……あぎいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
「なにエラソーに言ってるの? お願い? ご主人様に向かって?」
尻を高く上げたままにとりは痛みのあまり、顔を地面に擦りつける。
「あぎぎぎいいいいいい! お、おごおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「お前は何だ? その汚い口で言ってみな」
「あああああああ! ぶ、ぶたぁ! 豚河童ですううううううううううううっ!!」
「豚河童は人間に逆らっていいのか? 妖精ちゃんに逆らっていいのか?」
「いいいぎいいいいいっ! ごめんなざいいいいいいいごめんざいいいいいいいいっ!!」
そこでようやく札から力が抜かれた。
にとりはほとんど白目を剥き、口から舌をだらんと伸ばして痙攣を続ける。
「んじゃ、豚河童のにとりちゃんは僕たちの言うことを何でも聞くんだね?」
「ぁ……ぃぃぃぃ」
蚊の鳴く程の肯定。
だがそれに男たちは笑顔で頷く。
「じゃあ豚河童。ここで糞しろ」
突然の命令に、にとりは一瞬停止したように表情を消して男たちを見上げる。
男たちは先ほどと同じ笑顔をただ保っているだけだった。
「――あ」
妖精たちがにやにや笑っている。それだけで全ての理由を理解した気分だった。
「どうしたの豚河童ちゃん。するの? それとも――」
「っ!!」
札を握られる前に起き上がる。正直身体はガタガタでその動作だけでも気を失いかけるほどであった。何とか和式便所にするような体勢に持っていくとにとりはショーツを脱がんと手を伸ばす。
「あー、これもういらないね」
「そうだね。面倒だし」
「スカートも邪魔だな」
「いや、スカートは残しとかないと」
「んじゃこうするか」
男たちが取りだしたハサミによってにとりのショーツはあっさりと切り裂かれた。太ももを隠していたスカートはピンで服に留められ捲り上げられたままとなる。
さらに足も開かされる。
ほとんどM字開脚に近い姿勢にされては股間も肛門も隠す物は無くなってしまう。目の前には街道を行き来する人々。もし妖精が気まぐれでも起こせばにとりの人生はあっさりと終わりを迎えることだろう。
急かすようにぐいとリードを引かれる。
にとりは目を閉じ、腹に力を入れた。
「ぐ……ぐうぅ……っ!」
だが出そうと思えば思うほど出なくなるものなのか、うんこはおろか尿さえも頑なににとりの意思を拒否する。
「どうしたの? 出ないの?」
「で、出ます! 出ますから!」
背中に感じる札の気配ににとりは必死に叫ぶ。
歯を食いしばり満身の力を込めて踏ん張る。肛門は脱肛せんばかりに膨らみ、力み過ぎた顔は真っ赤に充血する。だが、見られているというどうしようもない恥じらいが、最後の最後でにとりの中の栓となっていた。
「しょうがない。手伝ってあげるよ」
「お、いいね」
背後に迫る男たちの気配。背筋を撫でられたような不快感に、にとりはつま先立ちになる。がさがさと紙をあさるような音。そして、
ずりゅっ!
「か――っ!?」
天を衝くような激痛ににとりは叫ぶことすらできなかった。
「はは。下の口で美味しそうに咥えてるよ」
「やっぱり河童はキュウリが好きなんだよね」
男たちが用意してきたもの。それは青々とした極太キュウリであった。畑で採れたてのそれは表面にびっしりとトゲを並ばせ、にとりの尻穴をぎちぎちとこじ開けている。
「無理やりケツをこじ開ければ出るでしょ?」
「そん、きゅう……いぎぎいぎいいいいいいい!」
力任せに男はキュウリを出し入れし始める。デリケートな肛門はトゲによってあっさりと裂けて、薄墨のような血を流し始める。
「や、やめてえええええええ! 痛い痛い痛い痛い痛あああああああ!!」
「うるさいなあ。大好きなキュウリなんだからもっと喜びなよ」
「ん~? この奥のがそうかな?」
「もっと押し込めば。どう?」
にとりの叫びを無視して、男たちはさらにキュウリを押し込める。ぐりぐりとキュウリを回転させて中をほぐし、激しく前後させる。
「いっ! いっ! いぎゅうっ!」
じょっ! じょぼぼぼぼぼっ!!
キュウリに押し出されるように股間から尿がこぼれ出した。昨日の暴力によって膀胱が傷つけられたのか、その色は絵具を溶かしたかのような赤色であった。
「あ……ああ」
生理の時にくらいしか見ることのない自らの血。それが尿の中に混じっている。まるで自分の身体が作りかえられてしまったような虚無感がにとりの中に渦巻く。
「このくらいでいいかな」
ひとしきりキュウリをこねまわしていた手が止まる。
最後に限界まで押し込むと、男はキュウリを一気に引き抜いた。
空気に触れて傷口が冷やされる。
直腸から向かってくる汚物を抑える気力は、もうにとりの中には残っていなかった。
「うあ……ああ……っ」

ぶっぶぷっ……みちみちみちみち…………っ!!
重力に引かれるまま地面へと落ちていく排泄物。長い時間腹の中に沈殿していたそれは、水分を吸われた黒い塊となっていた。繊維によってつらなかったそれはまるでソーセージのように数珠繋ぎになったまま地面へと落ちていく。
「……汚い」
背後からの妖精の囁きににとりは膝を震わせる。
「う……あっ」
ぶりゅ……っ。
無限とも思える時間をかけて、ようやくにとりは全ての汚物を出し終えた。
自らの股間にそびえる糞の山。それを見ていると自然と涙が浮かぶ。
「よしよし出したね。それじゃあ、仕上げだ」
「え……? あっ!」
突き飛ばされ、地面へと転がるにとり。その手足を男たちが押さえつける。
「さあ、三人とも思う存分やっちゃえ」
仰向けになったにとりが見たのは、湯気を立てる糞を手にした三妖精の姿だ。「ひぃっ」と悲鳴を上げるにとり。だが男の腕からは逃れられない。
三人の手がにとりの顔へと伸びる。途端、吐き気を催す悪臭が鼻をついた。
ぬちょっ。
軟らかく生温かい感触が顔を包む。
「ぃぃぃぃぃぃ~~~~~~~~~っ!!」
「便器には便器だってことを思い知らせないとね」
「うんこのパックだ。にとりちゃんもこれで少しは綺麗になるよ」
「さあ、みんなもっと塗りたくっちゃえ!」
三妖精の小さな手がにとりの身体を這い回る。服の奥へと手を入れられて乳房や腹にも黒茶色の便が伸ばされていく。さらには耳から指の間まで黒い汚泥が広がっていく。
「えい! シャンプー!」
サニーが髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。湖畔のような青だった髪はドブ川同然の茶にまみれ、嫌悪を催す悪臭を放つ。
「うげっ! おごぉ! おっおっぅ!」
とても少女とも思えぬ嗚咽がにとりの中から漏れる。三妖精は仕上げとばかりに糞をすくいあげると、にとりの口内へと手を突っ込んだ。
「んおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
苦いとも辛いとも思えるえぐい味。強いて言うなら溶けかけのチョコレートの食感を持った毒キノコといったところだろうか。身体全体がこれは異物だと拒否反応を示す。
歯茎、舌、口蓋に至るまで全てを糞で埋め尽くされた頃、にとりの眼球がぐりんと白目を剥いた。
「お、おげええええええええええええええええええええええええええええっ!!」
三妖精を吹き飛ばすほどの勢いで、にとりは吐瀉物を噴き出した。幸いほどの食事は取っていないため、飛び散った糞と胃酸以外は大した量はなかったが、周囲には腐ったヨーグルトのような酸っぱい味が広げる。
「うわっ、ゲロ吐きやがった」
「糞にゲロにやりたい放題だな」
「本当汚い豚河童だよ」
男に頭部を蹴られて、失神したにとりはそのままに横へと顔を向ける。その口からは茶色のよだれがこぼれ出していた。

 

 

「あっ! んっ! お兄ちゃん! 好きっ! 大好きっ!」
ずっちゅ! ずっ! ずんっ!
サニーの小さな身体は男が腰を打ち据えるたびに飛び上がる。肩に腕をまわしたサニーは激しい動きに苦しげな声を上げながらも必死に男を抱きしめる。その横ではスターもルナも同じように男たちと交わっている。スターは騎乗位、ルナは後背位が気に入ったようで、頬を染めながら甘い声を漏らしている。
「あっ! あああっ! あんんっ!」
びゅっ! びゅぐっ!
腹に広がる温かい感覚にサニーはぎゅっと男を抱きしめる。身体の中も外もあったかな至福の瞬間。蕩けるような顔をして、サニーは男に頬を擦り付ける。
「ふう、もう一回する?」
「あ、ちょっと待って」
サニーは手を伸ばして机の上のベルを鳴らす。金属の高い音が鳴り、慌ただしく走る音が廊下から聞こえる。
「お、お待たせしました!」
「遅い!」
走り込んできたにとりにサニーは置物をぶつける。額に血が滲むがにとりは文句一つ言わずに頭を床に擦りつける。
「申し訳ありませんでした! サニー様! ご主人様!」
現在のにとりは奴隷以下の“便器”であった。
にとりの役目は唯一つ『三妖精たちが呼んだらすぐにやって来て、糞尿を処理すること』それだけだ。受け止める場所は三妖精の気分によってまちまちで、口の時もあれば陰部に押し込まれることもあるし、チューブでお尻に流し込まれることもある。にとりの服装が水着一択になったのも汚れてもすぐに洗えるという便器として最適化された結果である。もはや反抗の意思すら失ったにとりはベルの音に怯えながら、排泄物の匂いになった自らの体臭に涙するのだった。
「ったくもー! 小!」
「はい! いただきます!」
威勢良く答えると、にとりは仰向けになって口を大きく開けた。舌を伸ばし、はあはあと荒い息をする様子はエサをねだる犬のようにも見える。サニーはにとりの乳房を潰すように腰かけると、その顔に向かい放尿を始めた。
「あ……んっ……ごくごくっ」
容赦なく降り注ぐ尿をにとりは躊躇なく飲み干していく。だが放尿の勢いには勝てず、やがて口の中に黄色の池ができあがる。
「汚いなあもう。この便器詰まってるよ」
「うぶっ!」
押しつぶすように尻を胸に落されても、にとりは口を閉じて尿をこぼさないようにする。
ごくり。
苦い味を飲み干し、ようやくにとりは口を開ける。
「あ、私もしとこうっと。大きい方ね」
肉棒を一旦抜き、ルナもにとりへと近づく。顔に跨るようにして座り、にとりの口に肛門の狙いを定める。
「全部食べてよ?」
「は、はい……あーん……」
再び口を開け、舌を垂らすにとり。スカートの闇から下品な屁が響き、ピンクの蕾が震える。それをモロに受けても、にとりは嫌がるどころか、すんすんと鼻を鳴らして匂いを吸い込もうとする。
「んっ……出る…はぁぁぁ……っ」
ぶりっ! ぶりゅっ! ぶちゅ!
白桃のようなルナの尻から、茶色の汚物が顔を出す。
今日も腸内は健康なようで、小さめのバナナ程の大きさの便がぼとりと顔へと落ちて鼻を塞ぐ。
「ふが……っ!?」
「まだ出る……んんぅ!」
続けて同じくらいの便が二つ三つと飛び出てくる。こちらはうまく口内へと落ちていく。
舌上を滑るぬめった感触と刺激的な味。にとりは必死に口を開けてそれを受け止める。
「ふう。出た出た」
にとりのツインテールでこびりついた便を拭き、ルナは立ち上がる。にとりは口いっぱいの便を一気に頬張った。パンパンに膨らむ両頬、唇から除く茶色の繊維質。ぐちゅぐちゅと泡立つような音を立てながら、にとりは口の中の汚物をすり潰して飲み込んでいく。
「……げぷっ」
臭いげっぷをするにとりにどっと笑い声が上がる。顔を真っ赤にして立ち上がろうとするにとりをスターが跨ぐ。
「私も使うわね」
にっこり笑み、スターのお尻がにとりの顔を押し潰す。
「んぶっ! ぷぁ!」
「んー、出るかな? もう三日も出てないのよね」
のんきな事を言いながら、スターはぐりぐりとにとりの顔に尻を押し付ける。尻肉に口鼻を塞がれ、にとりは声に鳴らない悲鳴を上げる。
「ほら。お尻をほぐして」
ようやく尻が少し浮く。だが息つく間もなくにとりには肛門洗浄の要求が飛ぶ。
「し、失礼します」
舌を伸ばし、スターの肛門を舐める。糞を食ったのだから怖いものなど何も無いはずなのに、この行為だけはいつまで経っても慣れることができない。愛らしい小さな窄まりに舌を這わせ、便秘でカチカチになった便に舌を突き立てる。なまじ集中せねばならない分、これは自分の意思でやっているのだということを強く意識させられ、便器とされた身分を噛み締めなければならなくなる。
「スターちゃんはSだねえ」
「ありがとうございます」
パートナーの言葉を笑顔で受け止めるスター。
その間にもにとりの舌は順調にアナルを掘り進め、腸内を広げるように舌を動かす。舌先に感じる便は直腸を埋めるほどの太さのようだ。やがて便は肛門付近へと移動していき、にとりの舌を押し返すようになった。
「ん、出そう。ふっ、んんんんんんっ!!」
スターは顔を赤くして力を込め始める。にとりは慌てて舌を引き抜くと、大きく口を開いて排便を待つ。ヒクヒクと蠢く肛門。そこから茶色の先端が出入りを繰り返す。
「ほらスターちゃん、頑張って!」
「あ……で、出るうぅ!」
パートナーの声援に励まされたのか、スターの肛門は一気に汚物を吐き出した。
「あ、ああ……ふ、太い……んぅ!」
あまりの太さと固さにスターは目の端に涙を浮かべる。三日にわたる便秘で凝り固まっていた一本糞はにとりの口の中にしっかりと起立し、まるで奇妙なオブジェのようになった。
「すごいすごい! きったなーい!」
「本当、便器ね」
見事に口に立つ便にサニーは手を叩いて喜び、ルナは侮蔑の眼差しを向ける。
「ほら、しっかり食べるのよ? それが貴方のお昼ご飯なんだから」
スターは悪臭に涙目になったにとりの手を取り、巨大な一本糞へと導く。
「食べるのよ。お芋を食べるみたいにもぐもぐと、ね」
悪臭に涙目になるにとり。だがスターはただ笑っているだけ。
意を決し、にとりは茶色のオブジェへと歯を立てた。
ぐぢゅり。
茶色の汁が噴き出し、にとりの顔を染める。
「くす……ふふふ」
「あはははははは!」
「ぷっ!」
三妖精の笑い声の中、にとりはただひたすら糞便を頬張り続ける。
そんな三人を見ながら男たちも穏やかに笑う。
「そろそろ食べ頃かな?」

 

 

 蔵は扉を閉めてしまえば一切の明かりはなくなり、自分の存在すらあやふやになる。だが口の中にこびり付いた排泄物の匂いは否応なく自身のおかれた状況を証明してくる。
三妖精は男たちと共に豪華な食事を取り、温かな湯で身を清め、柔らかな布団の中で寝ることだろう。それに対して自分に与えられるのは切れるような冷たさの床と男たちの糞尿だけだ。
「う……っ!」
不意に浮かぶ涙。
ほんの数日までは仲間たちと笑い合い、発明に没頭し、時には異変に関わったのに全ては遥か遠くに感じる。あの頃の自分はもうどこにも居ない。糞を食い、尿を舐め、それでも生き永らえているのが今の自分だ。
便器と言われても仕方がない。
いや、便器以下の糞虫だ。
底なしの穴に落ちたような虚無感が心を包む。どこまでも落ちていくような不安感は先の見えない未来に対するものか。
この先もずっと奴らの糞を食わされ続けるのだろうか。一生ここから出られないのだろうか。蔵の端を歩く蜘蛛と地虫を見つめ、糞よりはマシな味がするのかと考える。キュウリが食べたい。清流で身を清めたい。思いっきり水を口に含み、口内をブラシで洗い流してしまいたい。
蔵と扉が開いて男たちが入って来た。
怯えの表情を一瞬で消し、にとりはすぐさま立ち上がる。
だが涙の跡までは隠せない。うっすら頬に残る跡をまじまじと見つめられるのは、心臓を掴まれるのと同意義だった。張り裂けそうな沈黙の後、男たちはにっこりとにとりに微笑んだ。
「今までごめんね。にとりちゃん」
「……え?」
肩にかけられるのは柔らかな白いタオル。まるでダンスパーティでエスコートするように手を引かれて蔵から出される。
そこで初めて、今は朝なんだとにとりは知った。
「どこか痛むところはある?」
「あ……いえ」
促されるままに向かった先にあったのは無駄に広い浴室だった。
男たちに身体を洗われる。柔らかな布で背中から指先までを優しく撫でられ、糞に塗れた身体はあっという間にかつてのハリを取り戻していく。ややぬるめのお湯に肩までつかると全身の疲れが溶け出していくような心地だった。全身をタオルで拭かれ、用意されていた着物に袖を通す。
「……すごい」
大きな振袖と煌びやかな装飾の着物を着ると、まるで姫様になったような気分になる。柔らかでいてそれでいて丈夫、威厳ある重さがあるのに実際に動くと羽のように軽い。
「さ、次はこっちだよ」
次に向かったのは大きな居間だ。そこにはお盆から溢れんばかりの料理が用意されていた。白米に尾頭付きの魚。吸い物に浮かぶのは金粉か。漬物一つにしても手間のかかった最高級品が使われている。
「あ……」
思わずこぼれたよだれを慌てて拭き取る。その顔を殴ることも笑うこともなく男たちはにとりをお盆の前へと座らせる。
「食べていいんだよにとり。僕たちからのお詫びの気持ちさ」
朱色の箸を手渡される。
ごくり、と生唾を飲んでしまう。もしこの料理の中に毒が入っていようとも知った事かとにとりは箸を握った。
結論から言えば毒などは入っていなかった。
それどころか、舌が蕩けるほど美味しかった。
「どう? 満足した?」
「あ、はい」
素直に頷く。
今まで散々な目に会ったのに、こうしてお腹が膨れると不思議と目の前の相手に気を許しても良い気になってしまう。
ほう、と吐息が漏れる。
何だか身体が熱くなっているのは湯上がりだからだろうか。
「さ、行こうか」
「え? どこにですか?」
「良い所」
長い廊下はまるで忌まわしい物を遠ざけるようにして屋敷にあった。連れられるまま廊下を行くと、何か獣の息遣いのような音が聞こえて来た。だんだんと近づくとそれは明確に人の声と判別できるようになり、さらにすすり泣く嗚咽であると理解できた。
長い廊下の先にあったのは場違いな分厚い木の扉だった。左右の襖が豪奢であるだけにその異様さは下手なコラージュのように映る。
錠前の鍵が外され、扉が開く。その中に居たのは座敷牢に閉じ込められた三妖精の姿だった。首には分厚い鎖が繋がれ身動きを取れなくしている。全身を鞭で打たれたのか、服は細かな切れ目が入り、白い肌にも血の跡が滲んでいる。男たちの姿を見た途端、その泣き声は絶叫へと変わった。
「ああああああっ! やだあああああっ! 痛いのやだあああああっ!」
「ひぃ! ぃいいいいいいいいいいっ!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなざい!」
「……なに…え……?」
訳が分らなかった。
彼女たちは男たちに気に入られていたのではないのか。
疑問の視線に応えるように男は手に持った札を握った。途端、妖精たちの身体が跳ねる。
「ぎゃあああああああああああああああああああっ!!」
「痛い痛い痛い痛い痛いいいいぎいいいいいい!」
「ごめんなざいごめんなさいごめんなさいいいいいいいいいっ!!」
火に炙られる虫のように身をよじる三妖精。それは自分が受けていた仕打ちと全く同じものだった。
ああそういえば、霊夢が渡した札は何枚もあったなあと今更ながらに思い出す。
「ねえ、にとりちゃん」
男の一人に肩を掴まれる。鼓動が高鳴り、呼吸が乱れる。
「僕たちはにとりちゃんと仲直りしたいんだ。やっぱり悪いのはあの子たちだったんだ。にとりちゃんはあいつらの被害者。だから僕たちが懲らしめてやったんだよ。でもにとりちゃんも自分の手で仕返ししたいよね?」
ずっしりとした重みが手に乗せられる。
五十打もすればショック死するという鞭打ち。この鞭の先端が幾重にも分かれているのは、それを防ぐために相違無い。いかに死ににくく、いかに極大の苦痛を与えるかという悪魔の工夫の成果。
「さあ、にとりちゃん?」
囁きは脅迫と一緒だった。
もしも断れば……そう想像させるための言葉。
座敷牢の扉が開けられる。
三妖精は顔を青くして牢の端へと逃げ出す。互いに互いの背を押し合う姿はただただ哀れに映る。そしてそれは明日の自分の姿かもしれないのだ。
「にとりちゃん?」
男たちはただ笑っている。笑いながらこの状況を楽しんでいる。
苦痛と汚辱のシーソーゲームに乗っているのは自分たちだけなのだ。
「ごめん……なさい」
痛いのは嫌だった。苦しいのは嫌だった。お風呂が温かかった。ご飯が美味しかった。
自分の中で本当に大切なものが崩れていく。振り下ろした鞭は止められなかった。
鞭が振り下ろされる。
三妖精は耳をつんざく悲鳴を上げた。
男たちは拍手をにとりへと送り、にとりは卑屈な笑みで振り返った。

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